筆記具大学 万年筆研究科

このブログは、万年筆へ興味を持っていただけたらなと思い開設しました。染色が織りなす美しさや各種吸入式の構造美など楽しんでいただけたら幸いです。

【SNS・Shopのご案内】
Twitter:https://twitter.com/ReoEndokaizo
Instagram:https://www.instagram.com/mont_fuji_fountain_pen/
ショップ:https://successo.thebase.in/ 

プレピーの染色には半年必要!?

 新型コロナとの共存についてそろそろ考えなければならない時期となりました。在宅ワークいかがでしたでしょうか?また,進学や就職を控える高校生や学生,退院予定の院生の方の不安が1日でも早く払拭できることを願っています.


 さて,本日はプラチナ萬年筆が製造するプレピー・クリスタルへ染色する方法です.
結論から申しますと,プレピークリスタルへの染色は半年かかります.

カクノとプレピーの染色の違い
 プレピーとカクノは,同じ入門版万年筆というカテゴリーに属しますが価格帯が異なります.前者は400円(定価),後者は1000円(定価).価格差が600円,約2.5倍異なります.この差は,素材の違いや大きさ,ブランドバリュウ?と言うことでしょうか.あまり突っ込んでは考えないようにします.
 プレピーを染色することができる部位は,キャップ(クリップを含む),首軸,胴軸です.一方,カクノはキャップ,胴軸のみです.首軸は染色は可能ですが,クラックの貫入や変質をしてしまいます.


プレピーの染色までの道のり
 購入後すぐに染色すると,樹脂が白濁する恐れがとても高いです.そのため,購入後は半年程度寝かせます.この寝かせているときに何か起きていると思います.例えば,ガスが出ているとか,安定剤みたいなものが抜けることにより樹脂が落ち着くとか・・・様々な仮説が考えられます.そして,半年程度寝かせたプレピーは,高い確率で染色が成功します.したがって,プレピーを染色するためには半年程度かかります.
 他方,カクノでは購入後直ちに染色が可能です.これが価格差でしょうか.


プレピーへの染色の特徴
 プレピーとカクノでは染色時に①染色温度,②染色液の濃度,③染色時間,④染色しやすい色 に違いがあります。特に染色温度や染色液の濃度,染色時間は管理しなければなりません.
①染色温度
 60℃~65℃の範囲.65℃を超えると変質しやすくなり,白濁する傾向があります.
②染色液の濃度
 カクノでは,1(原液):15(水)~1:20の範囲の染色液、さらには,1:10の濃い割合でも可能です.しかし,プレピーでは,1:20の割合を守らなければなりません.大雑把な私にはこれだけでも・・・( ´∀` )
③染色時間
 カクノは30分くらいの漬けっ放しでも問題ありません.しかし,プレピーはそうもいかず,1回の染色時間は最大30秒.色が薄い場合は,一度取り出して冷却(10秒~20秒)し,再度30秒の染色を繰り返します.
④染色しやすい色
 カクノには染色しやすい色としにくい色があります.黄系や緑系,ブルー系が遅く,紫や黒,赤は比較的早く色が入ります.一方,プレピーはどの色も似たり寄ったりの時間で色が入っていきます.


総括
 プレピーの染色は,カクノと比べて管理しなければならないことや条件が多いですが,その条件や管理を最低限守る必要があります.しかし,条件や管理を真似ても同じように染められるかと言われると,疑問が残ります.最後には「感性」や「感覚」と言った経験知に左右されるのかもしれません.まさに,一瞬の芸術です.
 皆さんが挑んだ染色プレピーを拝見できる日を楽しみにしています.

カクノ de クレセント式


改造王子公式 カクノ クレセントフィラー


 パイロット カクノをクレセント式に改造する動画です。
 前回投稿した「カクノを用いた各吸入式の研究」のクレセント式への改造過程を踏まえて、改造過程を撮影しています。


 クレセント式への改造を抜き出し、下記に記載いたします。


「カクノを用いた各吸入式の研究」
3-3-4.クレセント式
ⅰ材料・道具

 シリコン製サック(CON-20などのゴムサックで代用可),アクリル管(①外径21mm×内径18mm,②外径16mm×内径12mm),パイロット純正カートリッジ1本,アクリル板(厚さ1mm,
アクリル製下敷き代用可)。
ⅱ再現・製作過程


①サックユニットの製作・取り付け
 サックの取り付けは,3-3-3.レバー式 ⅱ再現・製作過程 ①サックユニットの製作・取り付け
を参照して下さい。なお,クレセント式のシリコンサックの長さは,6.5cmに変更になります。


②クレセントとリングの製作
 クレセントはアクリル管の外径21mm×内径18mmを使用します。アクリル管を幅3mmで切断します。切断後,紙ヤスリで切断面を平らにしてください。その後,管の高さは5mmの半円(かまぼこ型)になるように再度切断します。こちらも同様に切断面を平にしてください。
 次にアクリル板(厚さ1mm)を5mm幅で長さ4.7cmに切断します。切断後,四隅の角を丸くなるようにヤスリがけをしておきます。
 接着は首軸側とおしり(尾栓)側でアクリル板の長さが異なるようにします(図12)。接着はアロンアルファ 対衝撃用またはアクリル樹脂接着材を使用して接着します。接着面積が小さいため,接着後は十二分に時間を置いてから使用してください。

図12 クレセントの接着位置


 クレセントが不意に動くことを防ぐリングは,アクリル管(外径16mm×内径12mm)を幅8mmで切断し,紙やすりで切断面を平にします。また,リングの外側の角も少し削り,手に当たった時の不快感を軽減させます。不快感が気になる方は,幅を3mmにするなどして調整してください。研磨後,リングを3mmほど切断しCの字にしておきます。この時もヤスリがけを施してください。


③胴軸加工
 胴軸の加工は,サックの取り付けは,3-3-3.レバー式 ⅱ再現・製作過程 ①サックユニットの製作・取り付け と要領は同じです。ただし,開口する穴の大きさと位置は違うのでご注意ください。
 開口部は,筆記時の状態(ペン先がテヘペロを確認できる)で胴軸に開口部の面を選択します。ただし,カクノの個体によっては,多少,面が前後する場合があります。これはクレセント式も同様です。
 面を決めたら,開口部の位置を決めます。胴軸のネジ部(首軸側)から3.1cm,胴軸おしり側から2.6cm,開口部の長さ2.0cm,幅3mmの範囲になります(図13)。この開口部よりも長さを長くする場合や位置を変更する場合,筆記時に胴軸へキャップを嵌められなくなる場合があるので注意してください。マスキングテープなどでガイドを作ることや胴軸内に割り箸を挿入してから穴あけをすると,やりやすくキズ防止になるかと思います。
 

図13 胴軸の開口部(クレセントの場合)


 開口後,C型のリングが機能しやすいように,棒ヤスリ(四角)を用いてガイド(溝)を製作します。溝は,首軸側の開口部より3mm後方から8mm(幅8mmのC型リングの場合,幅3mmであれば3mm)棒ヤスリ(四角)で削ります(図14)。
 削る時は,胴軸の6つの角を削るように往復で15回程度削ります。面の部分は削らなくても結構です(図15)。
研磨後にシリコングリスを少量塗布してください。

図14 C型リングの溝の位置

図15 棒ヤスリによる角の研磨(胴軸断面図)


④組立
 組立は,まず胴軸にC型のリングを取り付けます。取付後,開口部とC型リングの割れ目を合わせておきます。次に,胴軸の解雇王部が下に来るようにし,内部にクレセントを挿入します。このとき,クレセントの前後(首軸側短い方)に気をつけてください。クレセントは,針金や割り箸などで突っつきながら,開口部から胴軸外側へ露出させてください。この状態でリングを動かして問題がないようであれば首軸一式を胴軸に取り付けてください。もし,リングが固い場合やうまく作動しない場合は,再度研磨して調整してください。
⑤完成

こちらは完成したクレセント式をさらにチタンカラー風に染色したものです。