筆記具大学 万年筆研究科

このブログは、万年筆へ興味を持っていただけたらなと思い開設しました。染色が織りなす美しさや各種吸入式の構造美など楽しんでいただけたら幸いです。

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プレピーの染色には半年必要!?

 新型コロナとの共存についてそろそろ考えなければならない時期となりました。在宅ワークいかがでしたでしょうか?また,進学や就職を控える高校生や学生,退院予定の院生の方の不安が1日でも早く払拭できることを願っています.


 さて,本日はプラチナ萬年筆が製造するプレピー・クリスタルへ染色する方法です.
結論から申しますと,プレピークリスタルへの染色は半年かかります.

カクノとプレピーの染色の違い
 プレピーとカクノは,同じ入門版万年筆というカテゴリーに属しますが価格帯が異なります.前者は400円(定価),後者は1000円(定価).価格差が600円,約2.5倍異なります.この差は,素材の違いや大きさ,ブランドバリュウ?と言うことでしょうか.あまり突っ込んでは考えないようにします.
 プレピーを染色することができる部位は,キャップ(クリップを含む),首軸,胴軸です.一方,カクノはキャップ,胴軸のみです.首軸は染色は可能ですが,クラックの貫入や変質をしてしまいます.


プレピーの染色までの道のり
 購入後すぐに染色すると,樹脂が白濁する恐れがとても高いです.そのため,購入後は半年程度寝かせます.この寝かせているときに何か起きていると思います.例えば,ガスが出ているとか,安定剤みたいなものが抜けることにより樹脂が落ち着くとか・・・様々な仮説が考えられます.そして,半年程度寝かせたプレピーは,高い確率で染色が成功します.したがって,プレピーを染色するためには半年程度かかります.
 他方,カクノでは購入後直ちに染色が可能です.これが価格差でしょうか.


プレピーへの染色の特徴
 プレピーとカクノでは染色時に①染色温度,②染色液の濃度,③染色時間,④染色しやすい色 に違いがあります。特に染色温度や染色液の濃度,染色時間は管理しなければなりません.
①染色温度
 60℃~65℃の範囲.65℃を超えると変質しやすくなり,白濁する傾向があります.
②染色液の濃度
 カクノでは,1(原液):15(水)~1:20の範囲の染色液、さらには,1:10の濃い割合でも可能です.しかし,プレピーでは,1:20の割合を守らなければなりません.大雑把な私にはこれだけでも・・・( ´∀` )
③染色時間
 カクノは30分くらいの漬けっ放しでも問題ありません.しかし,プレピーはそうもいかず,1回の染色時間は最大30秒.色が薄い場合は,一度取り出して冷却(10秒~20秒)し,再度30秒の染色を繰り返します.
④染色しやすい色
 カクノには染色しやすい色としにくい色があります.黄系や緑系,ブルー系が遅く,紫や黒,赤は比較的早く色が入ります.一方,プレピーはどの色も似たり寄ったりの時間で色が入っていきます.


総括
 プレピーの染色は,カクノと比べて管理しなければならないことや条件が多いですが,その条件や管理を最低限守る必要があります.しかし,条件や管理を真似ても同じように染められるかと言われると,疑問が残ります.最後には「感性」や「感覚」と言った経験知に左右されるのかもしれません.まさに,一瞬の芸術です.
 皆さんが挑んだ染色プレピーを拝見できる日を楽しみにしています.