樹脂染色法 ー黒色染料の使い方(前編)ー
【はじめに】
ご無沙汰しています.今年はあまりの多忙で執筆も新作も染色方法の研究も進みませんでした。シリーズを楽しみにされていた皆様にはお詫び申し上げます.
さて,改造王子の染色ではあまり「黒色染料」を使用しませんでした.というよりも避けていました.
避けた理由
①他の色を殺す(グラデーションが難しい)
②染まる時間が早い
③気分的に乗る気じゃない
④めんどくさい
⑤アイデアが浮かばない
黒色の染料は単色染色でそのまま使えばなんとなく黒です.
ベタ塗りならぬベタ染め(単色で恋色を染めること)すれば黒くなります.
もう一度書きます.
そもまま使えば,なんとなく黒です.
1.黒色染料の正体
普段使用しているSDNさんの黒色染料ですが,薄めた染色液をよく観察すると複数の色の混合のように見えます.たぶん.
つまり,単色で黒ではなく,ブレンドではないかと見立てを立てたのです.
SDN「黒色」染料をグラデーション染色(単色グラデーション法)すると,こんな感じ.
写真1.SDN黒色染料を用いたグラデーション
黒に近いブルーブラックのような灰色のような色をしています。
なるほど.
この黒色染料は青系の色が強く,そのほかに数種類の染料をブレンドしているのですね.
染物の黒,特に礼服の黒はよく見ると紫だったり,赤が強かったりしますよね.また,モンブランの14Xシリーズの樹脂は,光にかざすとボルドーのように見えます.
日常の黒いものは,基本となる色にいくつかの色をブレンドして黒くしているのです.その結果,さまざまな「黒」が存在していることに改めて気づかされました.
逆に黒って単体,カーボンブラックとか?
2.黒染料の応用
SDNの黒色染料は,青系が強いということがわかりました.ということは,青系のグラデーションの上に「黒色染料」を乗せたらいいのでは?と考えたのです.
そこで,今回は夕暮れをイメージして染色をしてみました。
写真2 夕暮れ(静岡県某所 2020年10月20日頃 撮影)
写真は,若干の加工(インチキ)をしていますが,10月20日頃静岡県某所の丘陵地から撮影したものです.
水平線から下(丘陵地)は影なので黒
水平線より上(空)は赤系~オレンジ~黄色 水色~青~ブルーブラック・・・という感じで胴軸を染色します.
空を染めるポイントは,また今度.
写真3 秋の穏やかな夕暮れ
胴軸をSDNの空色,青色でグラデーション染色をした後,ほんの少しだけ黒を乗せてみました.すると,尾栓側付近が紺色に変化し,青いグラデーションにより深みが加わり,落ち着いた印象になりました.
つまり,SDNの黒色染料は青色系との組み合わせがとても相性がよく,深い表現の可能性を秘めていたのです.
3.今回の実験で分かったこと
SDNの黒色染料は青が強い
黒のベース色と同色系統でグラデーション染色すると,色に深みが出る.
4.今後の課題
では反対に赤との組み合わせは?
赤と青の混色は紫.この紫を踏み台にするとうまくいくのではないかと見立てました.
つまり,赤~紫のグラデーション.その紫の上に乗せる作戦であります.
次回は赤と黒
お楽しみに!(^^)!
※グラデーション染色法
樹脂染色法 ー②グラデーション編ー - 筆記具大学 万年筆研究科
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